学び舎でも一目置かれ

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学び舎でも一目置かれ

しばらくヴォール周辺の初歩的な回復魔法の技術を持っている神殿を渡り歩きながら修行したのよ。」
ピチピチの学生が神官になったわけよ、と言う言葉にレイモンドは苦笑いを浮かべながら頷く。
……当時からこんな調子だったのかな……
うっかりぴちぴち時代のヴァースを想像し、レイモンドは思わず紅茶の手を止める。
「んで、いくつかの町や村を渡り歩きながら怪我人の治療などをして経験を積みつつ自力で研究を続けて腕を磨いて、再びこの町の学び舎に戻ってきた頃には、おれもナイスミドルなオジサマになっていたわけだ」
……これは突っ込んでいいのか判断しがたい……
無反応を決め込む選択肢を選んだレイモンドは、静かに紅茶のグラスを傾けた。
そんな事にはお構いなしにヴァースは話を進める。
「気が付いたらおれも、学び舎でも一目置かれる位のレベルになってたらしくてね。
 学び舎の一角の小さな部屋を与えられて、回復魔法の研究にも没頭できる身分になったのさ」
それでもまだこの町では回復魔法はごく一部の人間のための特別なものだったんだけどね、と溜息を付く。
……最初から平等に使えるような環境では無かったんだな……
「そんなある時、ナイスミドルなおれにも転機が訪れた。
 学び舎の理事長が町の大通りで暴走した馬車に撥ねられて、瀕死に近い重傷を負ったんだ」
ツッコミを入れることを諦めたレイモンドは、黙って頷いた。
「ま、これも話が長くなるから簡単に言うと、神殿側の回復魔法でも間に合わなくて、結果的に各地で修行して回って腕を上げていたおれの回復魔法でなんとか一命を取り留めたんだ。
 でも当時はまだ今ほど研究が盛んではなかったこともあって、四肢の機能までは回復しなかったのよ」
ただ命が助かっただけ、って感じだったなと、ヴァースは当時を思い返しながらヒゲを撫でた。
「四肢の機能までは回復できなかったのか……」
俺から見ると、どんな怪我でも治せそうなイメージがあったんだが…とレイモンドが些か驚いた様な反応を見せると
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